〔01〕(2019.05.08) ~『意識』に導かれて~

『さらに続けて・探求ノート』で、「今後、意識障害をベースに意識探求を行う予定である。」と述べ、意識障害、認知症に関する、医学的研究の現状を概観して見たが、半世紀程前と比べ、目立った進歩は残念ながら認められなかった為、方針転換を余儀される事と成った。一方、現代社会において、認知症を筆頭に、意識障害、精神疾患、適応障害等が急激に増加し、犯罪の増加と共に、膨大な社会的費用負担と成っており、深刻な状況であることを認識出来たことは、怪我の功名であったかも知れない。認知症の増加は、医療技術が進歩し、人類の寿命が延び、高齢化社会を齎したことが原因であり、犯罪の増加は、経済価値・経済発展を優先し、精神文化や社会道徳を蔑ろにした当然の帰結であり、文化と文明のアンバランスによって生み出されたものである。この点は、『さらに続けて・探求ノート』でも触れておいたが、誤解して欲しくないのは、科学技術・工業技術の急速な進歩と高度資本主義社会の実現による、現代・文明社会を疎んじ、否定している訳ではない。また、アーミッシュの様な生き方を推奨している訳でもない。第一、地球上の、現在75億に上る人口を養う為には、文明の援けなしには不可能であり、我々が、文明の恩恵に浴していることは、紛れもない事実である。実際、5年前に脳梗塞に罹り、2年前に心不全を患った私が、日常生活に不自由無く、生きていられるのは、医療技術の進歩の御蔭である。また、引退後、『覚書』、『探求ノート』を書けたのは、インターネットにより、図書館や書店に一々出向かなくても、居ながらにして、瞬時に、調べものが可能であり、「Microsoft Word」という、辞書を参照しなくても文章が書ける、日本語ワープロの援けがあったからこそである。
私が言いたいのは、何故、人類は、工業製品の消費に興じ、産業が提供する娯楽に現を抜かし、貪欲に個人の経済的豊かさを追い求め、文明によって得た、利便性や余暇を、文化の創造や、不運で恵まれない人々を救う人援けの活動に当て、社会の底上げ(Uplift)と、文明と文化の共進化に努めなかったのか、不可解であり、残念でならないということである。有史以来人類は、四大聖人を筆頭に、社会道徳の形成、宗教、学問、芸術による文化の創造を行って来た。人々が文化の興隆や社会道徳の向上に共鳴する、良好な社会環境(集合意識)があったからこそ、歴史に残る、宗教家、思想家、芸術家が活動し、実績を上げることが出来たものと思われる。この様な人々が存在していなかったとしたら、人類の歴史は、さぞかし、凡庸で、生彩を欠いたものになっていたであろうし、今日、かろうじて保たれている、社会秩序も存続し得ていなかったかも知れない。現在、薬剤メーカーは、認知症、癌などの治療薬の開発にしのぎを削っており、警察や警備会社は、犯罪、交通事故などの防止と取り締まりに追われている。一方、精神文化の低迷、社会の退廃、などの改善(Uplift)、是正に真剣に取り組んでいる組織や人々は殆んど見当たらない。暗い話ばかりでは仕様が無いので、ここで、朗報をひとつ紹介したい。アルツハイマー、認知症の治療薬が発見され、実用化に向け、臨床実験も順調に行われつつあるとの事である。以下、例によってWikipediaの記事を抜粋して置く。
cf. 『リファンピシン』「ウィキペディア(Wikipedia)」
「大阪市立大学の富山貴美研究教授が1994年に『リファンピシン』という薬に、アルツハイマー病の原因となるタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」の蓄積を抑える作用があると発表。
研究のきっかけとなったのは、92年に報告された、日本のハンセン病患者に関する論文。端的に言うと、ハンセン病患者の人たちは高齢になっても認知症を発症する頻度が極めて低かった。ご承知の通り、ハンセン病患者は当時の国の政策によって長期にわたって外界から隔絶され、しかも、同じ薬を投与され続けてきた。
主な薬はダプソン、クロファジミン、そしてリファンピシン。これらの薬を入手して「アミロイドβ」の凝集を防げるか調べたところ、最も顕著に効果が現れたのがリファンピシンだった。
その後、原因タンパク質の小さな集合体であるオリゴマーの形成を抑えることができるかを調べると、ここでもリファンピシンが断トツで優れた結果をもたらした。さらに研究を重ね、リファンピシンはアミロイドβだけでなく、タウやαシヌクレインといった、様々な原因タンパク質のオリゴマー形成も抑制することが判明。
これにより、リファンピシンがアルツハイマー病だけでなく、脳の神経細胞が徐々に失われることで発症する、他のタイプの認知症にも効く可能性が示された。」

さて、方針転換を余儀なくされた私は、気を取り直し、久しぶりに、「人間学」や、意識、慾求、感情、思考、等を対象とする「心の科学」の現状と進捗状況を調べて見ようと思い立ち、心的事象に関わる、様々な項目について、インターネットで検索し、目を通して見ることにした。心の働きに関する事項は、意識、欲求、感情、認知、思考などと、心の様々な属性に対して名付けられ、個別に研究されてもいる。しかし、実際の心的現象は、これら、様々な要素が複合したものである。「マービン・ミンスキー」は、AIの父と言われる人物で、1980年代、ミンスキーとグッドは、ニューラルネットワークがいかにして任意の学習プログラムに従い自動的に生成され自己複製するかを示した。人工頭脳は人間の脳の発達と極めてよく似たプロセスで成長させることができたが、どのような場合でも、精密な詳細を知ることはできないし、たとえ詳細がわかっても人間が理解できる複雑さの百万倍も複雑すぎるだろうと述べている。今、流行りの「Deep Learning」の仕組みを、40年前に考案しており、AIの思考能力が発達するプロセスは、現在同様、解明不能であることも明らかにしている。1970年代初期、MITの人工知能研究所でミンスキーは、シーモア・パパートと「心の社会: The Society of Mind」理論と呼ばれるものを開発し始め、1986年、一般大衆向けに書かれたこの理論の包括的なテキスト『心の社会』を出版した。この本は、安西祐一郎訳により、1990 年、産業図書 から翻訳出版され、「さらに続けて・探求ノート」で紹介した、『意識障害の現象学』(上下2巻、1990年、世界書院発行、安芸都司雄著)、と共に購入し、目を通した覚えがある。読後感じたのは、主に、思考の成り立ちについて説明している内容からいって、『心の社会』というより、『思考の仕組み』と題した方が適当であるように思われ、人工知能の研究者だけあって、『思考の仕組み』を巧みに説き明かしている半面、他の、心の働きに関しては、単純化し過ぎている印象を受けた。ここで、私も仮説を提示したい。心の働きに関与する諸要素は、数学・物理学における、「スカラー」の様なもので、意識は「ベクトル」の役割を担っているように思われる。解悟意識などは、「ナビゲーター」としても機能しているのかも知れない。さて、現時点で、AIは、将棋、囲碁などのボードゲームに於いては、プロの棋士を凌ぐ実力を持っているが、感情の理解と表現に関しては、まだまだ、未熟である。エイジェントの協働により、思考が成り立つという考え自体は、賛同でき、心の働きには、様々な要素が拘わっていることには、私も同感である。ただ心の働きの全てをAIがマスター出来るかどうかは疑問である。更に言うと、心の構成要素についての個別の説明を幾ら学んでも、意識、感情などの理解が深まる訳ではない。心的事象に関しては、結局、体験し、経験することで学ぶしか方法は無いように思われる。ボードゲームでは、AIは、実際に、人間やAI同士で対局、実戦を重ねて、進化したが、AIに、あらゆる人間的体験・経験をさせることは不可能であり、AIが得意な分野において、人間がAIを利用する事を考える方が現実的である。ボードゲームでAIが人間に勝るのは、感情に左右されないからであるとも言える。ただし、利用にあたっては、悪用される事も十分配慮すべきである。我々が「意識」関連の資料を読んで、相応に、理解できるのは、意識、共感などの経験があるからであるとも言える。例えば、ラファエロの『アテナイの学堂』やモーツアルトの『ジュピター』を見聴きせずに、いくら説明や解説を読んだり聞いたりしても、意味不明であるが、実際に見聴きした後であれば、説明や解説の意味が、多少なりとも理解できるのと同様である。今日、「心の問題」について、宗教家、学者、評論家、達が、いい加減で、勝手な意見を述べているが、おそらく自身で実感していない所為ではないかと思われる。「縁なき衆生は度し難し」である。(私の体験、経験、実感をもとに書かれた)「覚書」や「探求ノート」を知り合いの大学教授、ジャーナリスト、出版社の編集者、に送って見たが、不思議と、感想、意見、など何も返って来なかった。愚痴を言いたくもなるというものである。『ヨハネ伝』第12章24節に「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」というキリストの言葉がある。私も『キリストに倣いて』(De imitatione Christi、トマス・ア・ケンピス)、孤独な歩みを続けて行くしかないようである。

〔02〕(2019.05.20) ~『宇宙』と共に~

古来、人類の意識は、宇宙を志向してきた。地域、時代により、様々な宇宙像を描出し、今日に到っている。現在、宇宙は加速度的に膨張しており、天体物理学の知見により、その大きさも科学的に明らかにされつつある(素粒子物理学における弦理論の創始者の一人である、アメリカの物理学者、レオナルド・サスキンドLeonard Susskind、1940年 – は、2004年のある論文で、全宇宙の直径は、24ギガパーセク≒780億光年が下限であると主張している)。しかし、人類の意識自体が広がったかと言えば、話は別である。欲望で曇った、近視眼的な意識で幾ら膨張する宇宙を眺めても、意識が変わらなければ、何にもならない(天体物理学者達の意識も、曇っていない事を願っている)。とは言え、「意識と宇宙」は、世界観の変遷に重要な役割を果しており、私が、意識科学と共に、宇宙科学の進歩を、フォローアップしている所以である。脳科学のアプローチを中心とする、意識科学においては、この半世紀間、目立った進展は見られない。一方、宇宙科学は、情報科学と観測天体物理学の技術的進歩により、飛躍的進化を遂げつつあるようである。近年、2件の大規模な国際的宇宙観測プロジェクトが成功裏に実施され、画期的な成果が期待されている。以下に、紹介し、若干のコメントを述べて置く。

◎一件目は、2013年12月19日にソユーズロケットを用いて打ち上げられたガイア計画(英: Gaia mission)についてである。これは、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡ミッションで、ヒッパルコスに続く位置天文学用の宇宙望遠鏡で、約10億個の恒星について精密に位置を測定し、恒星までの距離や固有運動を調べることを主な目的としている。
「ガイア計画では、銀河系の非常に高精度の3次元地図を作る予定である。3次元地図に固有運動の情報を加えることで、銀河系の起源や今後の進化の様子を推測することができる。また分光分析により、光度、温度、重力、元素構成等が分かり、観測されるそれぞれの恒星の詳細な物理的特徴が得られる。この大規模な恒星の全数調査は、銀河系の起源、構造、進化に関する広い範囲の重要な問題に取り組む際の基礎となるデータを与える。非常に多くのクエーサー、銀河、太陽系外惑星、太陽系の天体等が同時に測定される。」
「ガイアはソユーズ2ロケットで、地球から約150万kmの距離にあるL2ラグランジュ点に打上げられる。L2ラグランジュ点は熱的に非常に安定した環境であり、そこで地球による太陽の食を避けるリサジュー軌道を描く。」 「衛星との遠隔通信は、平均1Mbpsで行われるが、焦点面の合計の容量はしばしばGbpsに達する。そのため、画像ごとに数10のピクセルだけがダウンリンクされる。これは、その場での天体の検出や観測が必要であることを意味する。恒星の密度が濃い領域を探査している際には、このような過程は特に煩雑になる。」
「ガイア計画は、2000年に決定されたESAホライズン2000プラス長期科学プログラムの一環として開発が行われた。ガイア計画は2000年10月13日に6番目の重要なミッションとして採択され、2006年2月9日に計画のB2フェーズとして決定された。EADS アストリアムがハードウェアを担当することになった。当初打上げは2012年11月に計画されており、製造、打上げ、地上での運用まで含めて約6億5000万ユーロ(801億6000万円)である。 5年間のミッションで宇宙船から送られるデータ量の合計は、圧縮データで60TB、解凍したデータで200TBにもなる。データ処理は、2006年11月に欧州宇宙機関が行った公募で選ばれたData Processing and Analysis Consortiumが責任を負う。Data Processing and Analysis Consortiumには、欧州宇宙機関の組織の1つでマドリード近くに本部を置くEuropean Space Astronomy Centreからの参加者を含む、欧州20カ国から約400人の宇宙飛行士やエンジニアが参加している。資金は参加国から供給され、2020年頃を見込んでいるガイアの最後のカタログが作成されるまで担保されている。 2013年12月19日にソユーズ2ロケットを用いて打ち上げられ、太陽と地球のL2ラグランジュ点へ向かった。2014年7月25日から科学観測を開始し、2016年9月14日に最初の14か月分の観測に基づく解析データ(Gaia Data Release 1, DR1)を公開した。今後も観測は継続され、より高精度の解析データが順次公開される予定である。」
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

2018年4月、2回目のデータ公開(Gaia-DR2)が行われ、天体物理学者達の解析により、以下の事実が判明した。
  1. 直径9万光年の大きさを持ち、太陽のような恒星が1000億個存在すると言われる、天の川銀河は、130億年前誕生し、120億から100億年前、今回、ガイア・エンケラドスと名付けられた銀河と、衝突、合体した。
  2. その際、スター・バーストや超新星爆発により、銀河内に様々な元素が拡散し、生命の誕生に必要な元素を供給した。
  3. その後、大きな衝突が今日に至るまで、100億年に亙り無かった為、地球上で生命が誕生し、人類が、現在に到る進化を遂げることが出来た。
  4. ただし、20億年後に、天の川銀河の10分の1の大きさの、大マゼラン星雲が、95%の確率で、天の川銀河に衝突する可能性がある。
以上である。要するに、天の川銀河、太陽系、地球のそれぞれが、幸運にも、宇宙の、ハビタブルゾーン(HZ: habitable zone宇宙の中で生命が誕生するのに適した環境と考えられている天文学上の領域。ゴルディロックスゾーン GZ: Goldilocks zone とも呼ばれる。日本語では「生命居住可能領域」と呼ばれる。)に位置していた為、我々は、現在、存在していることになる。また、太陽の寿命は、あと55億年と言われているが、地球の場合、今から17億5000万年後から、32億5000万年後の間にハビタブルゾーンからはずれると考えられ、その後は太陽からの熱のせいで地球の温度が上がり、海の水が蒸発してしまい、最終的に生命が絶滅してしまうという説もある。時間を遡ってみると、17億年前には細胞生物がすでに存在していた。昆虫は4億年前から、恐竜は3億年前から、植物(被子植物)は1億3000万年前から地球上にいた。解剖学的には現生人類はまだ20万年しか存在していない。つまり、単なる細胞生物から知的生物へと発展するのにとてつもなく長い時間がかかっていることがわかる。専門家の間では、環境問題により、残り100年程で、人類は破綻するとの見方もあり、予断は許されない。
ガイアが作成した銀河系の地図
「ガイアが作成した銀河系の地図 (C) ESA/Gaia/DPAC」
「天の川銀河、夜空の光の帯を、ギリシャ語では『γαλαξίας (galaxias)』もしくは『kyklos galaktikos』と言う。kyklos galaktikos は『乳の環』という意味。」

◎二つ目は、2019年4月10日、世界中の望遠鏡を用いてブラックホールの事象の地平面の輪郭「ブラックホール・シャドウ」を撮影することを目指した国際研究チーム「イベントホライズンテレスコープ」が、人類初となるブラックホールの直接撮影に成功したと発表した件である。撮影に成功したのは楕円銀河M87の中心部にある巨大ブラックホールである。(観測できる範囲の宇宙に、ブラックホールは、1000億個、存在するといわれている。) 「M87は地球から5500万光年離れたおとめ座銀河団にある。この銀河にあるブラックホールは超巨大で、質量は太陽の65億倍に上る。 国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ・コラボレーション(EHT)」の責任者、シェパード・ドールマン氏は「不可視と考えられてきたものを見ることに成功した」と語った。 EHTでは世界の望遠鏡を結びネットワークを構成。200人以上の研究者がプロジェクトに携わり、10年以上をかけて撮影にこぎ着けた。プロジェクト名の由来となった「イベント・ホライズン(事象の地平面)」はブラックホールの周囲にあるとされる境界のことで、いかなる光も放射線も脱出できなくなる場所を指す。EHTに参加した欧州南天天文台(ESO)によると、撮影に当たっては「超長基線電波干渉計(VLBI)」という技術を使い、8つの電波望遠鏡の力を組み合わせた。実質的に地球とほぼ同じ大きさの仮想的な望遠鏡をつくり出した形だ。 こうした望遠鏡のネットワークにより、2週間で5000兆バイトのデータを収集。これをスーパーコンピューターで処理した結果、研究者による画像の構成が可能になった。イベント・ホライズン・テレスコープの建設と今日発表された観測成果は、何十年にもわたる観測的・技術的・理論的取り組みの賜物であり、さらに、世界中から集まった研究者たちの緊密な連携の結果でもある。イベント・ホライズン・テレスコープを実現するために13のパートナー機関が力を合わせ、既存の観測装置を活用するとともにさまざまな機関からの支援も受けて活動してきた。主要な資金援助は、アメリカ国立科学財団と欧州連合の欧州研究会議、そして東アジア地域の資金配分機関からのものである。」( AstroArts Inc. )

イベント・ホライズン・テレスコープで撮影された、銀河M87中心の巨大ブラックホールシャドウ。リング状の明るい部分の大きさはおよそ42マイクロ秒角であり、月面に置いた野球のボールを地球から見た時の大きさに相当します。
「イベント・ホライズン・テレスコープで撮影された、銀河M87中心の巨大ブラックホールシャドウ。」

チームは2017年4月、楕円(だえん)銀河「M87」の中心にあると考えられていた宇宙最大級のブラックホールを観測したが、8台の電波望遠鏡の観測データを約2年かけて慎重に解析し、画像処理した後、2019年4月10日に発表した。この結果は、各国の各メディアによって報道されたが、気になる点があるので、指摘して置きたい。報道の中で、取材に応じた天体物理学者達は、口を揃えて、「アインシュタインの一般相対性理論を裏付ける結果となった。過去100年にわたる物理学的、天文学的な問いに対する明確な答えだ。」などとコメントしている。そもそも、現代的なブラックホール理論は、アインシュタインの一般相対性理論が発表された直後の1915年に、理論の骨子であるアインシュタイン方程式をカール・シュヴァルツシルトが特殊解として導いたことから始まった。シュヴァルツシルト解は、時空が球対称で自転せず、さらに真空であるという最も単純な仮定で一般相対性理論の厳密解を導くことで得られた。アインシュタイン本人は一般相対論で特異点が有り得ることを渋々認めていたものの、それはあくまで数学的な話であって現実には有り得ないと考えていた。更に言わせてもらうと、近年、ブラックホール研究に最も貢献していると考えられる、ホーキング博士の業績に、誰一人、言及していないことも不可解である。ホーキング博士は、一般相対性理論が破綻する特異点の存在を証明した特異点定理をロジャー・ペンローズと共に発表した。 一般相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論を提示し、この帰結として、量子効果によってブラックホールから粒子が逃げ出すというホーキング放射やブラックホールの蒸発も予測している。(ホーキング放射は、実験により実証されてもいる。)ホーキング博士は、「車椅子の物理学者」としても知られる。1960年代、学生の頃に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症したとされている。ALSは長い間、発症から5年程度で死に至る病であると考えられていたが、途中で進行が急に弱まり、発症から50年以上にわたり研究活動を続けた。晩年は意思伝達のために重度障害者用意思伝達装置を使っており、スピーチや会話ではコンピュータプログラムによる合成音声を利用していた。死の直前まで、超弦理論とホログラフィック原理による、マルチバース理論の、数学的定式化に取り組んでいた。
2018年3月14日、イギリス、ケンブリッジシャーで死去。76歳であった。もう少し存命であれば、ガイアの観測データもイベント・ホライズン・テレスコープによるブラックホールの画像も、目にすることが出来たのに、惜しまれてならない。
余談であるが、弦理論の業績に対しては現在のところノーベル物理学賞は与えられていない。観測や実験によって、実証されていないと言う理由であると言う。ホーキング博士も同様の理由で、ノーベル賞を与えられていない。南部陽一郎は弦理論の創始者の一人としても知られているが、量子論の、自発的対称性の破れの発見により、2008年にノーベル物理学賞を受賞した。アインシュタインでさえ相対性理論では無く、光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明によって、1921年にノーベル物理学賞を受賞している。
今回の、2件の観測の成功によって齎された、膨大なデータは、間違いなく、理論物理学研究を活性化させ、大統一理論の先陣争いを加速させるに違いない。その過程で、ダークマタ―やダークエネルギーの謎も、何れ解明されことになり、量子力学における、観測者問題や時間の矢の問題も解消され、超弦理論の背景独立も達成されるかも知れない。近い将来、理論天体物理学のパラダイム・シフトが起こりそうな気配である。しかし、自然の探求も奥が深く、既知の部分が増えるに従って、未知の部分も多くなるのが常で、宇宙の謎も、解明に到るまで、まだまだ、先は長いようである。
ノーベル賞受賞が決定した直後、たまたま朝永博士とお会いした際、博士は(理論)物理学は、紙と鉛筆があれば出来るとおっしゃっておられたが、今や、(小柴氏のカミオカンデの例を引くまでもなく)その様な状況では無くなっているのは、確かなようである。
さて、宇宙から地上に目を転じ、我が日本国を取り巻く情勢を見ると、波風が一向に収まる気配がないようである。北朝鮮との拉致問題。韓国との慰安婦、徴用工問題。ロシアとの北方領土問題。中国との海上覇権問題。アメリカとの貿易摩擦問題。等々、問題山積と言ったところであるが、その最中、総理と国会議員による舌禍事件が起きている。 「4月30日、『退位礼正殿の儀』の際、『国民代表の辞』のほぼ末尾で、『已みません』を読めなかった?安倍首相が、『天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません』と、歴史に残る大失言をしてしまった。」
「日本維新の会に所属していた丸山穂高衆院議員の“失言”が報じられた。丸山議員は5月11日、酒に酔った状態で『戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と国後島の元島民に質問。さらに「戦争しないと、どうしようもなくないですか」と発言したという。」
「本日天気晴朗(せいろう)ナレドモ浪高シ」(1904.05.27、日露戦争、日本海海戦、開始)と打電した秋山真之や、流罪で佐渡に送られた順徳天皇、日蓮、日野資朝、世阿弥を想い、「荒海や 佐渡に横たふ 天の川」(1689年、元禄2年、7月7日)の句を詠んだ、松尾芭蕉が懐かしく偲ばれる今日この頃である。

〔03〕(2019.05.22) ~あとがきに代えて~

『人類の救済』を願って
「人生における時間の使途はトレード・オフである。」同様に、人類が何に、知力、技術力、資力を向けるかも、トレード・オフである。〔02〕で、最近の、観測天体物理学における成果について述べたが、相応の知力、技術力、資力を投入したからこそ、得られたものである。別に、宇宙観測が無駄であるとまでは言わないが、地球の現状を見ると、早急に、解決しないと人類の存亡に関わる深刻な課題があり、ほとんど解決の緒に着いていない有様である。「深刻な課題」とは、言うまでも無く「環境問題」であり、この10年の内に解決に乗り出さないと、人類の未来は無いと言ってよい。ホーキング博士は、「人工知能」「人工ウィルス」「核競争・戦争」「地球温暖化」「素粒子などの加速器を用いた実験」などを列挙し、今、地球は最も危険な状態に直面しており、100年以内に、他の惑星に宇宙コロニーを持てるようにならなければ、人類は滅亡すると言っている。人類の全てが他の惑星に移住できるとは思えないので、ホーキング博士一流のブラック・ジョークであると思われ、事態が逼迫している事を訴えたものであろう。地球環境が悪化し、人類の生存が危ぶまれる様な事になれば、宇宙観測どころでは無くなってしまう。以下に、地球環境の、科学的現状を、ご報告したい。
『世界中の専門家が参加する「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)は2019年5月6日、陸地の75%が人間活動で大幅改変され、約100万種の動植物が絶滅危機にあるとの報告書を公表した。現在の絶滅速度は、過去1000万年間の平均に比べて10~100倍以上で、さらに加速しているという。
同組織は生物多様性や自然の恵みなどを科学的に評価しており、初めて地球規模の現状や将来予測をまとめた。
報告書によると人間活動で世界の海域の66%が影響を受け、湿地の85%は消滅、16世紀以降に少なくとも680種の脊椎(せきつい)動物が絶滅した。過去40年で絶滅リスクは上昇し、現在は約25%の動植物が危機に直面。両生類40%以上▽造礁サンゴや海生哺乳類約33%▽昆虫約10%――で絶滅可能性がある。
プラスチックごみの海洋汚染は1980年以降10倍にもなり、少なくとも267種が悪影響を受ける。そうした生物はウミガメの86%、海鳥の44%、海生哺乳類では43%にも上る。
人間の生活への悪影響も深刻で、ミツバチなど花粉媒介生物の減少で最大年5770億ドル相当の穀物生産が失われる恐れがある。生態系やサンゴ礁の劣化で沿岸地域の防災機能が低下し、1億~3億人が洪水やハリケーンの被害を受けるリスクが高まっている。
社会変革を伴う対策がなければ、生態系や自然からの恵みが減少する傾向は2050年以降も続くと予測。地球温暖化も悪影響の主な原因の一つで、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に基づき産業革命前からの気温上昇を1.5~2度に抑えても、ほとんどの陸上生息域は大幅縮小するという。
10年に名古屋市であった国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では生態系保全のための愛知目標が採択されたが、20の個別目標のほとんどは期限の来年までに達成できない見込みで、IPBESのロバート・ワトソン議長は「人間の経済や食料安全保障、健康などを支える(生物多様性という)基盤を我々自身がむしばんでいる。あらゆる面で対策をスタートさせなければならない」と指摘している。』
『20世紀後半の温暖化に関しては、人間の産業活動等に伴って排出された人為的な温室効果ガスが主因とみられ、2007年2月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発行した第4次評価報告書 (AR4) によって膨大な量の学術的(科学的)知見が集約された結果、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は9割を超えると評価されている。このAR4の主要な結論は変わっておらず、より多くのデータを加えた第5次評価報告書の作成が進められている。
AR4によれば、2100年には平均気温が最良推定値で1.8–4°C(最大推計6.4°C)上昇すると予測される。地球温暖化の影響要因としては、「人為的な温室効果ガスの放出、なかでも二酸化炭素やメタンの影響が大きい」とされる。その一方で太陽放射等の自然要因による変化の寄与量は人為的な要因の数%程度でしかなく、自然要因だけでは現在の気温の上昇は説明できないことが指摘されている。一度環境中に増えた二酸化炭素などの長寿命な温室効果ガスは、能動的に固定しない限り、約100年間(5年–200年)にわたって地球全体の気候や海水に影響を及ぼし続けるため、今後20–30年以内の対策が温暖化による悪影響の大小を大きく左右することになる。理解度が比較的低い要因や専門家の間でも意見が分かれる部分もあり、こうした不確実性を批判する意見も一部に存在する。ただし、AR4においてはそのような不確実性も考慮した上で結論を出しており、信頼性に関する情報として意見の一致度等も記載されている。
地球温暖化は、気温や水温を変化させ、海面上昇、降水量(あるいは降雪量)の変化やそのパターン変化を引き起こすと考えられている。洪水や旱魃、酷暑やハリケーンなどの激しい異常気象を増加・増強させる可能性や、生物種の大規模な絶滅を引き起こす可能性も指摘されている。大局的には地球全体の気候や生態系に大きく影響すると予測されている。ただし、個々の特定の現象を温暖化と直接結びつけるのは現在のところ非常に難しい。 こうした自然環境の変化は人間の社会にも大きな影響を及ぼすと考えられている。真水資源の枯渇、農業・漁業などへの影響、生物相の変化による影響などが懸念されている。2–3°Cを超える平均気温の上昇が起きると、全ての地域で利益が減少またはコストが増大する可能性がかなり高いと予測されている。温暖化を放置した場合、今世紀末に5–6°Cの温暖化が発生し、「世界がGDPの約20%に相当する損失を被るリスクがある」とされる(スターン報告)。既に温暖化の影響と見られる変化が、世界各地で観測され始めている。
このように地球温暖化のリスクが巨大であることが示される一方、その抑制(緩和)に必要な技術や費用の予測も行われている。スターン報告やAR4 WG III、IEA等の報告によれば、人類は有効な緩和策を有しており、温室効果ガスの排出量を現状よりも大幅に削減することは経済的に可能であり、経済学的にみても強固な緩和策を実施することが妥当であるとされる。同時に、今後10–30年間程度の間の緩和努力が決定的に大きな影響力を持つと予測されており、緊急かつ現状よりも大規模な対策の必要性が指摘されている。 このような予測に基づき、地球温暖化の対策として様々な対策(緩和策)が進められているが、現在のところ、その効果は温暖化を抑制するには全く足りず、現在も温室効果ガスの排出量は増え続けている。これらの対策に要するコスト等から、このような緩和策に後ろ向きの国や勢力も少なくない。』
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

サミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles, 1812年12月23日 – 1904年4月16日)は、『自助論』(Self-Help)の序文で、「天は自らを助くる者を助く」(Heaven helps those who help themselves. )と述べている。人類の集合意識が目覚め、衆知を結集して、「不都合な真実」から目を逸らさず、「今、そこにある危機」に取り組む事を願って已まない。しかし、どうすれば、人類の集合意識が目覚めるのか、それこそが問題である。私が意識探求に取り組んできたのも、意識の科学的解明を目指していた訳では無く、如何にして、人類の集合意識をUpliftできるか、その際、相互理解の障害となる、意識の壁をどうしたら乗り越えられるのか、その打開策を求めての事であった。私が敬愛する思想家、シュレーディンガーは、cosmopolitan、naturalist、moralist、humoristであった。量子は粒子と波動の重なり合いの状態であるという、量子力学の考え方や観測問題にも、有名な「シュレーディンガーの猫」で、一石を投じた。量子が持つ二面性の特質を応用したのが、トンネル効果である。意識も個人意識と集合意識の重なり合いであるのかも知れず、意識のトンネル効果で、意識の境界を乗り越えることが出来ればよいのだが。現在、IBMで試作されている、量子コンピューターが進化して、意識現象が発現し、解明される様な事になれば、この点もはっきりするかも知れない。ついでに言えば、意識の科学的アプローチは、脳科学より、情報科学から行う方が、正解である様な気がする。とりあえず、私としては、トンネル効果ならぬ利己心を離れた愛の効果を信じ、絶望して厭世的にならず、人類への信頼を失わずに、辛抱強く、集合意識の目覚めを待ち続ける所存である。